【前職調査】弁護士に労働事件を依頼したことが次の転職に響くことはあるか?

前職で労働事件を弁護士に依頼したことが採用・転職後に不利益を及ぼすのではないかというご不安をお持ちの方がいらっしゃるかもしれません。

結論から述べますと、私の経験上、現在ではまず無いと言って差し支えありません。

しかし、可能性はゼロではなく、リスクを最小限に抑える努力も必要です。

 

本来、労働者の正当な権利を行使することが転職に悪影響を及ぼすといったことは、あってはならないことです。
厚労省の指針でも、身辺調査を行わないこと、本人の能力・適正のみで採用を決定することが強く求められています。

 

では実際はどうなのでしょうか。
まず、転職先が貴方の事件について知りうる現実的な経路は、限られています

1.前職関係者経由(前職調査、前職照会、身辺調査、経歴調査)
2.ネットや新聞、裁判所の訴訟記録等
3.知人もしくは弁護士経由

 

1.前職関係者経由(前職調査、前職照会、身辺調査、経歴調査)

かつては探偵等も利用して頻繁に行われていたという前職調査ですが、個人情報保護法が2005年に全面施行されて以降、本人の同意なく前職調査を行うこと、そして本人の同意なく前職調査に回答する(業務上知りえた個人情報を外部に開示する)ことに対し、重い刑事罰が科されるようになりました。
それに伴い、2005年以降はそもそも前職調査を行う会社自体がわずかとなり(行うとしても経歴詐称を調べるに留めるという所が多いようです)、リスクを冒してまで前職調査に回答・協力する会社はさらに稀というのが現状のようです。
さらに、労働事件の当事者である会社は、労基署に目を付けられるリスクや、感化された他の従業員が訴えを起こすリスクを避けるため、関係者および従業員にはなるべくその事実を知られたくないはずです。(あるいは、事件の和解条件として守秘義務条項が含まれている場合も多いです)。

以上の事実から、前職調査によって貴方が事件を弁護士に依頼したことがばれるリスクは、ほとんど無いと言って差し支えありません。(なお、転職先によっては身辺調査・経歴調査を行う同意書にサインを求められることもあるかと思いますが、この同意書は転職先企業との間で成立するものであり、前に勤務していた会社が個人情報を開示することについて同意したことにはなりません。)

 

2.ネットや新聞、裁判所の訴訟記録等

ネット・新聞に掲載された犯罪歴等について確認する企業は一定数あるものと思われますが、労働事件含む一般民事事件の判例において、本人の同意がある場合を除き、個人名が公開されることはありません。
また裁判所で訴訟記録を閲覧請求することも可能ですが、閲覧請求には事件番号が必要なうえ、プライバシーにかかわる個人名などについてはあらかじめ閲覧制限を申し立てることも可能です。

 

3.知人もしくは弁護士経由

弁護士には守秘義務と違反した場合の重い懲戒が科されているため、弁護士から漏れることはまずありません。
もっともありうるのが、知人から転職先に漏れるパターンです。嫌がらせか、狭いコミュニティなら自然と転職先の耳に入る場合もあるかもしれません。
安易に周囲に話さないなどの努力が必要です。